冬から春にかけての時期は、空気が乾燥しやすく、暖房で窓を閉め切る時間も長くなりがちです。このタイミングで毎年のように話題になるのが、さまざまな感染症の流行。咳やくしゃみをする人が増え、「オフィスや店舗、施設の空気環境、大丈夫かな?」と不安になる季節でもあります。
そこで注目されるのが「空気清浄機」、なかでもオフィス・店舗・施設など大人数が集まる場所で使われる業務用空気清浄機です。一方で、「本当に感染対策として意味があるの?」「過信しても大丈夫?」といった疑問の声も少なくありません。
このページでは、そんな冬の体調不良に対する疑問と業務用空気清浄機の役割について解説します。
まずは、なぜ冬〜春に風邪が流行しやすいのか、空気環境の視点から整理してみます。
代表的な要因として、次のようなものがあります。
空気中には、咳やくしゃみ、会話などによって生じる飛沫や、そこから水分が蒸発して小さくなった飛沫核(エアロゾル)が浮遊することがあります。
これらは、換気が不十分な空間では長くとどまりやすく、濃度が高い状態になりやすいとされています。内閣官房の資料でも、密閉・密集・密接のいわゆる「三つの密」が重なる空間で感染リスクが高まることが指摘されており、換気の重要性が強調されています。
つまり冬の室内は、「人が集まりやすい」「換気が不足しやすい」「乾燥しやすい」という条件が重なり、空気中のウイルスが広がりやすい状態になりがちです。この状況を少しでも改善するために、換気と合わせて空気清浄機に注目が集まっています。
米国環境保護庁(EPA)は、室内空気環境に関する情報の中で、「適切に使用された空気清浄機や空調フィルタは、屋内の空気中の汚染物質(粒子や一部のウイルスなど)を減らすのに役立つ」としています。
高性能フィルタを搭載した空気清浄機が、室内の粒子濃度を下げる可能性については、複数の実験研究で示されています。たとえば、教室規模の空間で空気清浄機を稼働させた実験では、空気中に漂う微小粒子の濃度が低下したという結果が報告されています。こうした実験は、空気の流れを人工的に再現したモデル空間や実環境に近い設定で行われ、空気清浄機が粒子を除去する一助になり得ることを示しています。
また、空調・換気の専門分野では、HEPAフィルタのような高性能フィルタが微細な粒子を高い効率で捕集できることは広く知られています。
国際的な空調工学団体でも、HEPAフィルタが特定の粒子に対して高い捕集性能を持つことが示されており、粒子の低減を目的とした場合に空気清浄が一定の役割を果たす可能性がある点は、多くの専門家の間で共通した見解となっています。
ただし、空気清浄機は単独で空気環境を完全に整えるものではありません。
空気清浄やフィルタリングだけでは室内の空気環境を十分に安全に保つことはできず、基本となる換気やその他の対策と組み合わせて運用することが前提になります。
また、空気清浄機の「感染予防への確実な効果」については、空気清浄機は室内の粒子を減らす補助的な役割を果たす一方で、それだけであらゆるリスクを取り除けると評価するのは適切ではない、という点が専門家の間で共通した考え方になっています。
要するに、「空気中の粒子を減らす目的で空気清浄機を使うことは一定の意味があるが、それだけで感染症を防げると考えるのは適切ではない」ということが言えるでしょう。
ここまでの内容を踏まえると、業務用空気清浄機は、冬の感染症シーズンにおいてどのように位置づけるのが現実的でしょうか。
まず、大前提として重要なのは、換気が基本であるという点です。
窓開けによる自然換気、機械換気設備の適切な運転などによって、室内の空気を入れ替え、エアロゾルや汚染物質の濃度を下げることが、感染症予防への対策として重要とされています。
そのうえで、業務用空気清浄機は、次のような意味で「補助的なレイヤー」として活用するのが現実的です。
特に業務用の場合、オフィスや店舗、教室、医療・介護施設など、「複数人が一定時間同じ空間にとどまる」シーンで使われることが多くなります。
このような場所では、単純に1台の家庭用機を置くだけでは空間全体をカバーしきれないため、広さに応じた風量・台数・配置を検討する必要があります。
また、「ウイルスに対して◯◯%の効果」などと謳う製品については、その根拠となる実験条件や対象が、実際の空間・実環境とどの程度近いのかを確認することが重要とされています。
極めて狭い試験空間での結果を、そのまま広い室内に当てはめることはできないためです。
では、実際に感染症シーズンの対策として業務用空気清浄機を導入・活用する場合、どのような点に気を付けるとよいのでしょうか。ここでは、実務的な観点からポイントを整理します。
まず押さえておきたいのは、「換気が足りない状態を、空気清浄機だけで補う」という発想は避けるべき、という点です。
内閣官房の資料でも、換気の徹底が基本的な対策として繰り返し示されており、換気が不足した空間では感染リスクが高まる可能性があるとされています。
そのため、業務用空気清浄機の導入・運用を検討する際には、
といった順序で考えるのが現実的です。
HEPAフィルタなど高性能のフィルタを備えた空気清浄機が、空気中の粒子を減らすうえで有効であると言われています。しかし、フィルタ性能だけを見て選ぶのでは不十分です。粒子濃度の低減効果は、
業務用の場合は特に、単に「とりあえず入口に1台置く」といった感覚ではなく、人の滞在時間が長いエリア・密集しやすいエリアを優先して気流を設計するという視点が重要です。
先ほど紹介した日本の医療機関の解説でも、空気清浄機はあくまで数ある対策の一つであり、それだけで感染を完全に防ぐことはできないとされています。
具体的には、
といった基本的な対策と組み合わせて初めて、空気清浄機の導入が「意味のある一手」になっていきます。空気清浄機を入れたからといって、他の対策を緩めてしまうと、かえって全体のリスクが高まる可能性もある点には注意が必要です。
冬の感染症シーズンは、どうしても不安が高まりやすい時期です。だからこそ、業務用空気清浄機を「魔法の箱」のように扱うのではなく、換気や基本的な衛生対策と組み合わせた、現実的でバランスのとれた対策の一つとして位置づけることが大切です。
そのうえで、空間の条件や利用者の状況に合わせて、業務用空気清浄機を上手に活用できれば、冬の空気環境への不安を少しやわらげる心強い味方になってくれるはずです。
業務用空気清浄機は製品ごとに特徴や性能の違いがあるため、解決したい問題に合わせて選ぶことが重要です。ここでは「健康管理対策」「油・ニオイ対策」「ホコリ対策」という3つの目的に分けておすすめの製品を紹介しています。