様々な感染症の流行をきっかけに、「空気の安全・安心」への関心は一気に高まりました。それ以降オフィス・学校・病院・介護施設・商業施設など「人が集まる空間」では、今もなお室内空気質(Indoor Air Quality:IAQ)を一定水準以上に保つことが求められています。
こうした背景から、業務用空気洗浄機の市場は、2025年以降も中長期的な拡大が予測されています。
本コラムでは、2025年11月時点での今年の業務用空気洗浄機のトレンドを整理しつつ、2026年に向けてどのような方向性が強まりそうかを分かりやすく解説します。導入検討中の企業や、既存機のリプレイスを考えているご担当者の方は、ぜひ「これから数年先を見据えた選び方」の参考にしてください。
空気清浄機市場全体(家庭用+業務用)は、世界的に今後も緩やかな成長が予測されています。国や調査機関によって具体的な数値は異なるものの、年間数%台〜1桁台後半の成長率(※)が見込まれており、中長期的には拡大基調にあると考えられます。
特に注目すべきなのが、家庭用に加えてオフィスや病院、学校、商業施設などの「業務用・商業用」分野です。これらの分野では、感染症対策に加えて、従業員や利用者の健康配慮、快適性向上、さらには企業のブランド価値向上といった観点から、室内空気質の維持・改善が求められています。
そのため、家庭用よりも高い性能や耐久性、設置自由度、メンテナンス性などが求められる業務用空気洗浄機へのニーズは、2025年時点でも継続して高い状態にあります。
また、粒子状物質だけでなく、揮発性有機化合物(VOC)やニオイ、二酸化炭素(CO₂)など「見えないが体感に影響する要素」への関心も高まっています。これに伴い、単純な「空気清浄機」という枠を超え、空気質センサーや換気設備と連携しながら、空間全体の空気環境をマネジメントするソリューションとして進化している点も、2025年の特徴と言えます。
2025年の業務用空気洗浄機では、もはや単一のフィルタだけで空気をきれいにする製品は主流ではありません。多くの機種が、次のような多段構成を採用しています。
このように、粒子とガスの両方を対象とし、「捕集する」「不活化する」「ニオイを抑える」といった複数の役割を一体化した構造が、業務用では一般的になりつつあります。特に、医療機関や介護施設、飲食店などでは、目に見えない菌・ウイルスとニオイの両方に配慮されるケースが多く、HEPAレベルのフィルタに加え、脱臭・殺菌機構を組み合わせたハイブリッド構成が好まれています。
こうした多段フィルタ構成は、フィルタ交換やメンテナンスの手間・コストが増えるという側面もありますが、その分、空気質の総合的な改善効果が期待できるため、2025年における業務用空気洗浄機の「標準仕様」として定着しつつあります。
もうひとつの大きな流れがスマート化です。業務用空気洗浄機の一部では、Wi-Fiなどの通信機能を搭載し、スマートフォンアプリやクラウドと連携できる製品が登場しています。
これにより、遠隔からの運転制御やスケジュール設定はもちろん、空気質のデータをリアルタイムで確認したり、履歴として蓄積したりすることが可能になっています。
また、CO₂、PM2.5、温湿度、VOCなどを測定できるマルチセンサーを備えた空気質モニタリング機器も普及しつつあり、これらと空気洗浄機を組み合わせることで、一定以上の濃度になった時だけ運転を強めるといったデータに基づいた制御が行いやすくなっています。
一部の新しい製品では、人の位置や動きを検知するセンサーを活用し、人がいるエリアに優先的にきれいな空気を届けるような機能を持つものもあります。
同じ性能の空気洗浄機を用いても、「どこにどう置くか」「空調との風の流れがどうなっているか」によって、実際の空気清浄効果は大きく変わることが知られています。研究機関などでも、空気清浄機の設置位置や向き、空調機との位置関係によって室内の粒子濃度が変動する事例が報告されています。
こうした知見は、オフィスや教室、会議室などにおけるレイアウト込みの空気環境設計の重要性を示しています。
2025年時点では、単なる機器の販売だけでなく、最適設置の提案まで含めたコンサルティング型サービスも増えています。
業務用空気洗浄機の導入は、各種ガイドラインや基準とも関わりがあります。世界保健機関(WHO)は室内空気質に関するガイドラインを提示しており、各国はこれを参考に学校・病院・オフィスの基準を整備しています。
日本では厚生労働省が室内濃度指針値を定め、学校環境衛生基準などでCO₂基準も示されています。
また、民間の空気質認証制度も存在しており、一定レベルの室内空気質を満たす空間であることを対外的に証明する手段として活用されています。
ハイブリッドワークの普及により、オフィスでは「健康的で快適な空間」の提供が求められています。会議室や集中ブースなどで、CO₂センサーと連動した空気洗浄機が選ばれやすくなっています。
子どもが長時間過ごす環境では、感染症対策に加え、花粉・ハウスダスト対策やCO₂による集中力低下の抑制も重要です。静音性・安全性・フィルタ交換のしやすさが重視されます。
医療・介護領域では、ニオイや衛生面への配慮から、高性能フィルタ+脱臭・殺菌機構を備えた空気洗浄機の導入が進んでいます。
ニオイ、タバコ、湿気、カビ対策として空気洗浄機の導入が進んでいます。特に脱臭性能・デザイン性・静音性が求められる分野です。
空気質センサーと空気洗浄機、換気設備、空調設備を連携させて、建物全体の空気環境を制御するシステムが普及していく可能性があります。
初期費用を抑えつつ、フィルタ交換・点検・モニタリングを含めた月額制サービスが広がっていくと考えられます。
低圧損フィルタや高効率モーター、センサー連動による最適運転など、省エネと空気質の両立が重要テーマになります。
人がいる場所だけを重点的に浄化するゾーン空気清浄の考え方が広がると予想されます。
2025年の業務用空気洗浄機は、「多段フィルタ」「スマート化」「用途別最適化」がポイントです。2026年に向けては、これに加えてシステム連携・省エネ・サービス化・ゾーン最適化が重要になっていきます。
空気洗浄機の選定は、性能だけでなく、「どこに置くか」「空調とどう組み合わせるか」「将来どのように運用するか」といった視点も重要です。空間の特性に合った適切な組み合わせを検討してみてください。
業務用空気清浄機は製品ごとに特徴や性能の違いがあるため、解決したい問題に合わせて選ぶことが重要です。ここでは「健康管理対策」「油・ニオイ対策」「ホコリ対策」という3つの目的に分けておすすめの製品を紹介しています。